他の人の着眼点と感覚を吸収して、世界を感じる感性を豊かにしてきた研究成果

世界を感じる感性が豊かになるってどのような状態だろう?

世界から何を感じられるかは、どんなものごとに着眼できているか、何を意識しているかによって決まります。例えば、 ある空間に対して、普通の人が「色」や「かたち」 など限られたことに着眼しているのに対して、感覚が豊かな人は、「素材」、「色とかたちの組み 合わせの相性」、「人の行動」、「時間の経過による変化」や「観る者の立ち位置と風景の見え方の関係」などと多様なものごとに着眼しています。

感覚が豊かになったかはいろいろなものさしで計れるかもしれませんが、僕は確認と開拓がしやすいということで、それまで意識しなかったものごとに着眼できるようになるということを目指しています。


僕が研究していた、感覚交換散歩とは、他の人が街を歩いた時に考えたことや感じたことについて語った音声を聞きながら歩くことで、他の人の着眼点と感じ方を通して、街を追体験する方法です。着眼点と感覚の共有を支援し、受け取った着眼点と感覚を利用して世界を感じられるようにしていきます。


例えば、過去の実験では、こんなコメントがありました。

「ツタの先っぽがいいと写真に撮っていて、自分 も気になっていたから、よく見るようになっ たら、二階のフェンスにも若干ツタがあって、 それが龍が昇っているように見えることに気付いた。」

「コンクリと土と草など足裏感覚を堪能できた。」

「足裏感覚について自分が語って、それに触発されて相手が気づきを加えて、それを聞いてさらにパワーアップした。落ち葉の濡れ具合 やかたちの差なども感じられた。」



感覚交換散歩実践によって、着眼点の種類のバリエーションが広がったかを検証しました。分析方法としては、歩行時に語っていた音声データを分析して、着眼できている対象の種類数を数えました。

7ヶ月間の15回の散歩を通して、増加幅に差はあるものの、継続的に実践していた3人全員の、着眼点の種類が増えました。僕については、約40から200以上へと増えました。これは、相手の着眼点を受け取って、その着眼点を通して、世界を感じられるようになった結果でしょう。



参加者Bさんの「空間のリズム」という着眼点を取り入れた僕は、Bさんが左右のポールのリズムを感していたことを自分なりに発展させて、森を歩きながら木々の太さを音程に、木々との距離を音量に、形を音のゆがみに変換して捉えました。

参加者Dさん の「足裏感覚」を取り入れた僕と参加者Cさんは、公園を歩きながら、アスファルトと土と落ち葉な ど地面の素材の違いを足の裏で感じ取っていました。 僕はそれまで特に着眼していた「植物」と受け取った「足裏感覚」を組み合わせて、足の裏で「葉のかたち」や「葉の湿り度」を感じ取れるようになりました。

CさんはBさんと音声を交換した回に「人の種類と関係」という着眼点を受け取り、次の散歩で「人の年齢と行動」を強く意識して、「パンの袋を持ったおばさん」や「折りたたみ自転車に乗るおねえさん」など、人の特徴や行動を細かく捉えられるになりました。

Bさんは僕がコンクリートから生えている植物が背比べするように伸びている様子について語る音声を聞いて「植物の生命力」という着眼点を意識するようになり、「青いトマト」や「青くて細い竹」を見て、応援する気持ちを抱いていたり、「植物の気持ち」を想像して話しかけるという行為が観られるようになりました。


このように、実践を継続することで、自らの感覚を言葉にすることと、他の人の音声から着眼点を見出して、他の人から受け取った着眼点と自らの着眼点を組み合わせて、さらに世界の感じ方を豊かにしていくことが確認できました。


この研究についてより詳しく知りたい方はこちらで論文を読むことができます。興味のある方はどうぞ。




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